去る2017年10月22日(日)、第19回日本統合医療学会北海道支部会が、札幌市立大学桑園キャンパスにて開催されました。
総会最初のプログラムでは、ワールドカフェを行いました。ワールドカフェとは、対話形式で進められる話し合いの手法です。テーマに従って対話を進める中、自由な発想や顔の見える関係性が生まれ、互いの理解や多くの知識、洞察が得られます。本物のカフェのように飲み物や菓子をつまみながらリラックスした雰囲気の中で対話をしていきます。昨年度行いましたところ、それまでになかった異職種の会員の交流や、統合医療についての知見の広がりがみられて好評だったため、今年度はテーマを変えて二度目の開催となりました。参加者は職種や立場が違う男性7名、女性16名、合計23名でした。
『これからの北海道の医療を考える~地域の強みを活かす統合医療』というテーマのもと、3つのお題について、1ラウンド毎に前のグループで話し合った内容を次のグループでシェアしながら対話していきました。どのグループも制限時間には収まりきれない勢いで活発な対話がなされていました。グループトークの後は全体でのシェアや総括となり、それぞれグループで得られた気づきを共有し深める学びとなりました。
「ワールドカフェは、参加された皆さんは多職種で分野によって違う、画一的ではない意見だが、魂レベルにまで自然治癒力を高めていくという意見の共通性があった。」という参加者の感想がありました。
また、臨床検査技師・鍼灸師・あんまマッサージ指圧師の蒔田美穂さんは、初めて参加されたワールドカフェについて、「(ワールドカフェは)初対面の人たちと4人1組で自己紹介とあらかじめ決められたテーマについて話すのです。そして次々にメンバーを入れ替えていきます。見ず知らぬ人々と与えられたテーマについて話すことはとても新鮮でした。見知らぬ人とお知り合いになり、社会的人間関係などにとらわれることなく考えを述べあうことで斬新な意見が生まれました。また機会があれば、ぜひ参加させていただきたいと思います。」と感想を寄せてくださいました。
このような深い交流から、様々な気づきや意見、課題提起がシェアされましたので、その一部をご紹介します。
第1ラウンドのお題「北海道には心身の健康な暮らしに活用できる、どんな資源がありますか?」に関しては
- 自然、温泉や水、観光資源の活用、食べ物、農業など北海道ならではの豊かさ。
- 恵まれた自然と都会的な生活のバランスのよさ
- 時間がゆっくり流れる豊かさ
- 人材・いろんな場面、世代に対して私達自身が人的資源
- 地域のつながり…等。
第2ラウンドのお題「あなたの生活や仕事の中で心身の健康を高め豊かにしていくために、北海道の資源をどのように活用できるでしょうか?」では
- 自然との調和
- 忙しい中で意識的に自然の中で過ごすなど、意識的に行う必要がある。
- 多職種との出会い
- 充実したケア…等が挙がりました。
また、第3ラウンドは「北海道の資源を活用して、多職種や異分野の人と力を合わせると何ができそうですか?」では、いくつもの課題提起や提案がなされました。
大きくわけると2つのトピックスがあり、その1つは統合医療の周知の必要性と発信方法についての提案、2つ目は他分野との連携についてでした。
統合医療の周知について、その対象は、一般市民や高齢者や難病の方など、自治体や大学、会員間です。その方法として
- 一般市民に体験してもらう企画として支部会による統合医療まつりの開催や、自治体や大学に広報することで公共施設での出張講座や大学での市民講座などを開催する
- 支部会から自治体の関係者を学会招待したり、統合医療の学習会を行う
- 高齢者や難病の方に活用していただくよう、費用を学会から支援してもらえたらいい
- 支部会で、会員相互の交流と代替療法体験の機会をつくること等が挙げられました。
そして、総合的に健康が高まるように、地域のコミュニティーや情報共有のネットワークを他の分野と連携してつくる必要性や、支部会員から行政などへ働きかけ、ネットワークを作っていけるのではないかという提案もなされました。
ワールドカフェの最後に、副支部長の猪股千代子先生は「統合医療は、果たして安全で効果があるのか?」と迷っている方も多いと思われ、そういう方々に、専門的な知識技術に基づく質の高い療法の提供と倫理的対応の遵守を目指す学会であることなど、正しい情報を発信し、統合医療推進活動を活発にしていく重要性について語られました。
ワールドカフェで発案された事項は、これからの支部会活動の方向性や活動内容を示唆してくれるものであり、今後もこのような会員の声が反映される企画の必要性を実感しました。
(文責・吉武ゆり)